【やってみた】『ジブリの呪い』は本当か?ChatGPTとともに検証してみた
今年のお正月休み、とにかく長くて割と暇なことが確定していました。
なので前からやってみたかったアノマリーの検証をやってみることにしました。
やってみたかったのが『ジブリの呪いは本当か?』ということ。
これをChatGPTに投げかけたところ、日本株GPT(日本株に詳しい版のチャットGPT)に「Python(パイソン)をつかってやってみよう」的なことを言われたので、Pythonというプログラミング言語を使ってチャットGPTとともに検証してみることにしました。
※記事作成完了後に文字数カウントを見たら、14000字近くありました。ながーい記事なのでその点ご了承ください。
前提:そもそも「ジブリの呪い」って何?
「ジブリの呪い」自体は色々なところで言われており、実際の定義というかアノマリーの内容も複数あります。
当記事では基準を明確にするため、以下の定義とします。
ジブリの呪いとは、アメリカの重要指標「雇用統計」の発表日と、日テレ系の「金曜ロードショー」(略称:金ロー)でスタジオジブリ作品が放送される日が重なると、相場が荒れるというアノマリーです。
荒れるというからには「ボラティリティが高まる」「上下動が激しくなる」と思っていましたが、どうもいくつものジブリの呪いについて触れている記事を読むと「暴落する」というニュアンスを含んでいるようです。
この記事はそれが本当かどうか、過去の統計や株価の動きからデータを調査してみます。
前提2:対象範囲は2000年から2024年まで
こういった調査はある程度データ量が必要です。たった数回を見て相関アリナシを判断するのは、統計的にまったく意味がない。
ChatGPTにどのくらい昔からだと統計上信用できそうなのか聞いてみたところ、一定期間とのこと。では2000年からのデータならどう?と聞いたら「いいですね。ある程度ボリュームがあり、統計上有意ではないかと」との答え。
てなわけで、対象となるデータは2000年から2024年までのデータを用います。
ただし、それ以上のデータを含む場合もあります。その場合は文章中に書いておきますね。
また、データの参考にデータリストを並べている箇所があります。ただ、この個所は参考程度にとどめておいてください。
それではやってみよう
ということで、ジブリの呪いは本当なのか検証してみます。
1:金ローでジブリ作品が放送された日を抽出してみる
まず、金ローでジブリ作品が放送された日を抽出してみます。
- 過去の金曜ロードショーの放映作品履歴:《金曜ロードショー》過去の放送一覧、放送予定の映画もすべて紹介!(ホビヲログ)https://www.hobiwo.com/entry/kinro
- ジブリの作品一覧:スタジオジブリの作品(スタジオジブリ)https://www.ghibli.jp/works/
このふたつのデータソースからPythonで処理し、データを抽出します。
ソースの書き方などはChatGPTに習いつつ。
以下は作品リストの例です。
年月日 | 作品名 |
---|---|
2024/8/30 | 天空の城ラピュタ |
2024/8/23 | となりのトトロ |
2024/5/10 | 耳をすませば |
2024/5/3 | 猫の恩返し |
ちなみに2000年から2024年までの間に、金曜ロードショーは1212回も放送されました。
そのうち、ジブリの放送は150回。
てなわけで、2000年から2024年までジブリが放送される割合は12.38%。つまり金曜ロードショーの約8回に1回ジブリが流れているってことになります。
ちなみに以下の4作品は金ローで放送されたことはないようです。
- 君たちはどう生きるか
- レッドタートル ある島の物語
- ギブリーズ episode2
- On Your Mark
私、地上波でレッドタートルを見た記憶があるのですが……あれは深夜の「映画天国」という枠なので、金ローではないのですね。
あと、地上波でOn Your Markを見た記憶もあります。ただ、同日放送の猫の恩返しがジブリのリストに残っていますから、それで十分かなと。
2:雇用統計のスケジュールを抽出してみる
次に、雇用統計のスケジュールを抽出します。
- Investing.com 米国非農業部門雇用者数:https://jp.investing.com/economic-calendar/nonfarm-payrolls-227
3:日経平均やアメリカの指数を取ってみる
また、日経平均やアメリカの指数を取ってみます。
- ヤフーファイナンス
- ていうかPythonのyfinanceライブラリからダウンロード
こちらで日経平均、ダウ30、S&P500の2000年以降のデータをそれぞれ持ってきました。
4:データを整形する
これらのデータを整形し、取り扱いしやすくします。
例えば日時の表示を合わせるとか、項目の見出しを共通のものにするとか、必要な情報を追加するとか、そういうことです。
5:データから相関を見出す
最後に、データから相関があるかどうか精査して終わりです。この場合統計的に意味のある事かどうか、検定にかけておきます。
結果:ジブリの呪いはあるのか?
ということで、ジブリの呪いは本当なのか検証してみます。
チャットGPTとともにPythonにヒーヒー言いながら検証してみました。
1:ジブリ映画が放送される日、変動率は高まる?
まず、ジブリ映画が放送される日に「荒れる」を「変動率が高まる」と解釈してみましょう。
この場合、ジブリ映画が放送される日は本当に変動率が高まるのか、調べてみます。
ちなみにここでいう「変動率が高い」は、プラスでもマイナスでも一定以上の場合を指します。
1-1:S&P500の場合
まず、ジブリ映画が放送される日にS&P500の変動率が高いか見ましょう。
荒れるの解釈のひとつは「ボラティリティが高い」なので、変化率が高い時とジブリ放送日が重なる可能性が高ければやっぱり荒れるって言っていいはず。
結果はこちら。
– | ジブリ放送日 | ジブリ非放送日 | S&P500全体 |
---|---|---|---|
平均的 | 79.33% | 79.33% | 79.33% |
低い(穏やか) | 13.33% | 11.17% | 11.22% |
高い | 7.33% | 9.50% | 9.44% |
うん、ジブリ放送日よりジブリ非放送日のほうが変動率が高いのなんでなん。
てなわけでジブリ放送日だからS&P500が荒れるとは言い難い。
1-2:ダウの場合
全く同じことをダウでもやってみましょう。
– | ジブリ放送日 | ジブリ非放送日 | ダウ全体 |
---|---|---|---|
平均的 | 79.33% | 79.63% | 79.62% |
低い(穏やか) | 14.00% | 10.59% | 10.67% |
高い | 6.67% | 9.79% | 9.71% |
こちらも有意差はなく。
ていうか、ジブリ非放送日がボラティリティが高いらしいの意味わからん。
ジブリ放送日だからダウが荒れるとも言い難いですね。
1-3:日経平均の場合 ※日経平均は翌営業日で
同じことを日経平均でもやってみましょう。
ただし日経平均の場合、放送当日ではなく、その翌営業日に荒れるかどうかを見ます。
ここでは、ジブリ放送日の翌営業日と、ジブリ放送日じゃない日の翌営業日、あと全体の割合で計算してみました。
– | ジブリ放送日の次の営業日 | ジブリが放送されない金曜日の次の営業日 | 金曜日の翌営業日全体 |
---|---|---|---|
平均的 | 73.20% | 74.27% | 74.14% |
低い | 13.73% | 14.14% | 14.09% |
高い | 13.07% | 11.59% | 11.77% |
翌営業日=月曜日、とかパキッと決まればわかりやすいのですが、三連休で火曜日スタートの週とかもありますので、翌営業日としています。
金曜日の翌営業日のジブリ放送日と非ジブリ放送日、あと全体の比較をしてみましたが、有意な差は見つかりませんでした。
ジブリ放送日と日経の変動率の高い日には相関はありませんね。
あえて言うならジブリ放送日の翌営業日は若干変動率が高いかな、ってくらいですけれど、2パーセントくらいの差だと意味があるとは言えない。
1-4:結論→相関はない
今回の場合、ダウ・S&P500・日経平均で調べましたが、ボラティリティが高い日とジブリ放送日に関連はありませんでした。
なので、ジブリ放送日に荒れやすい傾向がみられるかというとそうでもない。
2:雇用統計がある日とジブリ映画が放送される日、変動率は高い?
一方、雇用統計がある日・ジブリ映画が放送される日、変動率は高いといえるでしょうか。
2-1:前提条件
前提条件として、ここではすべての日付を対象とします。
2-2:ダウの場合
ダウの場合。
ジブリ放送日 | ジブリ非放送日 | |
雇用統計発表日 | -0.07% | 0.11% |
雇用統計非発表日 | 0.03% | 0.02% |
ダウを見ると、ジブリ放送日で雇用統計発表日は少し下がりやすいようですね。
2-3:S&P500の場合
S&P500の場合。
ジブリ放送日 | ジブリ非放送日 | |
雇用統計発表日 | -0.06% | 0.09% |
雇用統計非発表日 | 0.03% | 0.03% |
S&P500を見ると、ジブリ放送日で雇用統計発表日は少し下がりやすいようですね。
2-4:日経平均の場合
日経平均の場合。
※日経平均の場合、発表が夜になりますので、翌営業日の変動率を計算しました。
ジブリ放送日 | ジブリ非放送日 | |
雇用統計発表日 | 0.05% | 0.02% |
雇用統計非発表日 | 0.02% | 0.05% |
ちなみに、すべての金曜日翌日だと0.04%の変動率です。
一方、雇用統計実施日の翌日だと-0.96%の変動率です。
2-5:ChatGPTとT検定をかけてみる
最後に、ChatGPTともに、T検定にかけてみます。
(T検定とは、統計的に意味があるか調べる検定の一種です)
で、いくつかのパターンで意味があると思われるパターンが見つかりました。
以下はT検定の結果を見せたチャットGPTのコメントです。
====
主な結果のポイント
ジブリ映画放送日とジブリ非放送日の株価の違い
いくつかの市場(S&P500、日経平均)で有意な差がありました。つまり、ジブリ映画が放送されている日は、株価が変動しやすいという結果が出ました。
特にS&P500のデータでは、放送日と非放送日で株価がかなり違うことが確認されています。
ジブリ放送日と雇用統計発表日の違い
この2つの日付を比べても、株価の違いはあまり有意ではないことがわかりました。つまり、ジブリ放送日と雇用統計発表日には、それほど明確な株価の違いがないということです。
ジブリ非放送日と雇用統計発表日
ジブリ非放送日と雇用統計発表日では、かなり有意な差がありました。これは、これらの日に株価が大きく変動しやすいことを示しています。
まとめ
ジブリ放送日は、株価に影響を与えている可能性が高いということです。特に、ジブリ映画が放送される日には、株価が大きく変動する傾向があるという結果です。
一方で、雇用統計発表日との比較では、大きな違いは見られませんでした。
====
ということで、ジブリが放送される日は変動率が高い傾向が見られます。
おまけ:続けて出てきた疑問を解消する
いくつか、データをいじくりまわしてみて「これはどうなの?」と思うことがありましたので、別でやってみることに。
疑問1:雇用統計のうち、ジブリ放送日に発表される雇用統計だけが悪い可能性
まず疑ったのが「ジブリ放送日に発表される雇用統計だけはバッチリ差が出るほど悪いんじゃないの?」という可能性。
とくに雇用統計は、予想があらかじめ出て結果が出ます。この結果が予想より良いか悪いかで、マーケットに与える影響も変わる。これは皮膚感覚ですが、いろいろな投資家が言っているので大きく外れではないはず。
てなわけで雇用統計の予想より良いか同等か悪いか、で、ジブリ放送日とジブリ非放送日、そしてすべての雇用統計発表日の結果についてまとめたのがこちら。
良い | 同等 | 悪い | |
ジブリ放送日 | 47.37% | 0% | 52.63% |
ジブリ非放送日 | 59.32% | 1.14% | 39.54% |
雇用統計すべて | 57.81% | 1.00% | 41.20% |
ということで『ジブリ放送日に発表される雇用統計の結果は、ジブリ放送日ではない日に比べて、悪い結果がやや多い傾向が見られる』ということが分かります。
統計的な意味は? カイ二乗検定とFisherの正確検定にかける
とはいえ差は微妙。これ、統計的に有意と言えるの?意味あるの?
という疑問が起こったので、この結果を『カイ二乗検定』と『Fisherの正確検定』という統計学的に有意かどうかを判断する検定にかけます。
カイ二乗検定にかけて、統計的に意味があるか調べる
カイ二乗検定にかけるとこんな返答。
ジブリ放送日の雇用統計に有意な差があります。
ジブリ放送日でない日の雇用統計に有意な差はありません。
ジブリ放送日と全体の発表には有意な差はありません。
ジブリ非放送日と全体の発表には有意な差はありません。
Fisherの正確検定にかけて、統計的に意味があるか調べる
また、Fisherの正確検定というのにかけるとこんな返答。
Fisherの正確検定のp値: 0.296
ジブリ放送日と非放送日の評価に有意な差はありません。
すべての雇用統計における評価のp値: 0.1917
すべての雇用統計の結果に評価に有意な差はありません。
カイ二乗検定、Fisherの正確検定にかけた結果
てなわけで統計的に見たときには相関があるとは言い切れないレベルです。
あとChatGPTに聞いたのですが
「統計的な根拠から見て、「ジブリ放送日に悪い発表がされる可能性が高い」と考えるのは早計です。」
ですって。統計学的に見たら「統計的に有意な差はなく、まぐれの範囲と考えてよい」のだそう。
疑問2:ジブリ映画が放送される日、ゴールデンクロス・デッドクロスが発生しやすい?
ジブリの呪いは「荒れる」と聞きます。
で、荒れるとトレンド転換が起こりやすいのだそう。そうかどうかは知りませんが、荒れたと言えるかどうかを判断するために、トレンド転換が起こったかどうかもチェックしましょう。
トレンド転換が起こったかどうかを判断する指標のひとつが「ゴールデンクロス」「デッドクロス」というものが発生したかどうか。
ゴールデンクロス・デッドクロスは、移動平均によって株価の変動を読み取る分析のひとつ。とても有名な指標なので、テクニカル分析で取り入れている人も多い指標です。
なお、ゴールデンクロスは強気・上昇トレンドスタートのサイン、デッドクロスは弱気・下落トレンドスタートのサインと言われています。
今回はダウとS&P500において、ジブリ映画放送日はゴールデンクロス・デッドクロスが発生しやすいかを調べました。
2-1:前提条件
前提条件を並べておきますね。
- 短期:5日移動平均
- 中期:25日移動平均
- 長期:75日移動平均
- 短中:5日移動平均と25日移動平均
- 中長:25日移動平均と75日移動平均
- 短長:25日移動平均と75日移動平均
短中・中長・短長はそれぞれ、短期・中期・長期の平均線が交わりゴールデンクロス・デッドクロスが発生するかどうかです。
例えば短中の場合は、短期の5日移動平均線と中期の25日移動平均線が交わるかどうかを示します。
また、今回はまず金曜日のみ抽出し、そこから金曜日全体・金曜日でジブリ放送日・金曜日だけどジブリ放送日ではない日で分けます。
そして略称として、ゴールデン・クロスは『GC』デッドクロスは『DC』としておきます。
2-2:ダウの場合
ダウの場合、こんな感じ。
金曜日のみ全体 | 短中 | 中長 | 短長 |
GCのみ発生 | 2.62% | 0.73% | 1.51% |
DCのみ発生 | 2.62% | 0.72% | 1.51% |
どちらかが発生 | 5.25% | 1.45% | 3.02% |
どちらも発生しない | 94.75% | 98.55% | 96.98% |
ジブリ放映日に限るとこんな感じ。
ジブリ放送日 | 短中 | 中長 | 短長 |
GCのみ発生 | 1.33% | 1.33% | 0.67% |
DCのみ発生 | 2.00% | 0.67% | 2.00% |
どちらかが発生 | 3.33% | 2.00% | 2.67% |
どちらも発生しない | 96.67% | 98.00% | 97.33% |
ジブリが放送されない金曜日に限るとこう。
ジブリ非放送日の金曜日 | 短中 | 中長 | 短長 |
GCのみ発生 | 2.06% | 0.99% | 1.44% |
DCのみ発生 | 3.23% | 0.81% | 0.99% |
どちらかが発生 | 5.30% | 1.80% | 2.42% |
どちらも発生しない | 94.70% | 98.20% | 97.58% |
ということに。
てなわけで、ジブリ放送日にゴールデンクロス・デッドクロスが発生する可能性はあまり大差がありません。
つまり、ジブリ放送日にゴールデンクロス・デッドクロスが発生するとは言い難く、トレンド転換ともいえない。
2-3:S&P500の場合
S&P500の場合、こんな感じ。
金曜日のみ全体 | 短中 | 中長 | 短長 |
GCのみ発生 | 2.69% | 0.95% | 1.03% |
DCのみ発生 | 2.77% | 0.55% | 1.98% |
どちらかが発生 | 5.46% | 1.50% | 3.01% |
どちらも発生しない | 94.54% | 98.50% | 98.50% |
ジブリ放映日に限るとこんな感じ。
ジブリ放送日 | 短中 | 中長 | 短長 |
GCのみ発生 | 0.67% | 1.33% | 1.33% |
DCのみ発生 | 2.67% | 1.33% | 3.33% |
どちらかが発生 | 3.33% | 2.67% | 4.67% |
どちらも発生しない | 96.67% | 97.33% | 97.33% |
ジブリが放送されない金曜日に限るとこう。
ジブリ非放送日の金曜日 | 短中 | 中長 | 短長 |
GCのみ発生 | 2.96% | 0.90% | 0.99% |
DCのみ発生 | 2.78% | 0.45% | 1.80% |
どちらかが発生 | 5.75% | 1.35% | 2.78% |
どちらも発生しない | 94.25% | 98.65% | 98.65% |
ということに。
おまけで「金曜日ではない日」の発生率がこちら。
参考:金曜日ではない日 | 短中 | 中長 | 短長 |
GCのみ発生 | 2.45% | 0.60% | 1.47% |
DCのみ発生 | 2.43% | 0.68% | 1.23% |
どちらかが発生 | 4.87% | 1.27% | 2.71% |
どちらも発生しない | 95.13% | 98.73% | 98.73% |
ということに。
2-4:これが統計的に意味ある?
これをChatGPTにかけ、検定を行います。
結果としては、統計的に意味があるものとは言えない、ということです。
どれもカイ二乗検定では意味のあるものではないとのこと。
また、参考までに金曜日ではない日のデータも出しました。この金曜日ではない日と有意に差があるといえるデータは見当たらず。
つまり、どのデータも誤差のレベルと考えてよい、というのがChatGPTが行ったカイ二乗検定の結果となります。
疑問3:「ディズニーの呪い」はないの?
すべての金ロー放送と比べると、ジブリの放送日はかなり少ない。金ローすべての放送回のうちジブリの放送される割合は12.38%なので、いやむしろこれは多いのか??
ところで、統計的に見て比較対象となる材料があると、より統計の信ぴょう性が増します。
ということでジブリに似たもので、映画放送がある程度されていて、知名度もあって……。
となると、ディズニーですよね。
ここでは「ディズニーの呪いはないの?」という点で調べてみます。
3-1:準備
株価などのデータはすでにあるので、ここではディズニーのデータだけ持ってきます。
ディズニーの映画だと判断する材料はいくつかありますが、Wikipediaのディズニー作品の一覧から『ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ製作の実写映画』『ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ長編作品』と『ディズニー/ピクサー作品』そして『ビデオ・シークエンス』を対象とします。
また、期間はこれまで同様、2000年から2024年に絞ります。
ここで注意してほしいのですが、ディズニー放送のタイトルは種類が多く、残念ですが金ロー放送リストから完璧二ディズニー映画だけを抽出したとは言い難い気がします。
それでも2000年から2024年の間に、金曜ロードショーでディズニーの放送回数は63回あるようです。
3-2:設問1「ディズニー映画放送日、雇用統計が有意に悪いといえるか?」
まず、金ローでディズニーを放送する日、雇用統計が有意に悪いといえるかを調べます。
良い | 同等 | 悪い | |
ディズニー放送日 | 71.42% (10個) | 0% (0個) | 28% (4個) |
ディズニー非放送日 | 55.73% (136個) | 0.81% (2個) | 43.44% (106個) |
平均と比較しても、ディズニー放送日に発表される雇用統計は良い結果が出る確率が高いといえます。
ただしこれにカイ二乗検定とフィッシャーの正確検定をかけると、どちらも意味はないとのこと。
つまり統計的に見て有意な差は認められないということです。
3-3:設問2「ディズニー映画放送日の翌営業日、日経平均は良いか?」
次に、金ローでディズニーを放送する日の翌営業日、日経平均の動向はどうでしょうか。
ここでは、日経平均が前日比でいいか悪いかを判断しました。
上昇 | 横ばい | 下落 | |
ディズニー放送日 | 60.00% (36個) | 0% (0個) | 40% (24個) |
ディズニー非放送日 | 51.76% (3143個) | 0% (0個) | 48.20% (2927個) |
ということで、ディズニー放送日翌日はむしろ日経平均は好調の傾向が見られます。
ただしこれにカイ二乗検定とフィッシャーの正確検定をかけると、どちらも意味はないとのこと。
つまり統計的に見て有意な差は認められないということです。
(なお、上のデータそのままでこの場合カイ二乗検定を行うとエラーが出ます。なので、あえて同等は無視し、いいか悪いかで各検定を行いました)
3-4:結論
結論は以下の通り。
- ディズニーの呪いはない
- むしろディズニー放送日翌日の日経は調子がいい
- ただしこれらに統計的に有意な差はない
疑問4:「コナンの呪い」「ルパンの呪い」はないの?
ディズニーに関してはこういう結果でした。
同時に比較対象として考えてみると、何度も放送されているアニメシリーズと言ったら「コナン」シリーズと「ルパン三世」シリーズですよね。
これらは雇用統計の結果・変動率の大小などと相関があるのでしょうか。
4-1:準備
株価などのデータはすでにあるので、ここではコナンとルパンを抽出します。
やり方は今回はとても簡単で、映画タイトルに「コナン」「ルパン」が入っているかどうかで判断します。
なお「ルパン三世VS名探偵コナン」「ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE」という映画も金ローで放送したことがあるようですね。この場合はルパンシリーズでもカウントし、コナンシリーズでもカウントして処理を行います。
(ちなみにリストの中に「未来少年コナン」という作品は含まれませんでした。
また、ルパン三世シリーズの「ルパン三世 カリオストロの城」はジブリ作品だという声は根強いのですが、ここではルパンシリーズとして扱います)
ちなみに指定した期間にコナン放送回数は47回、ルパン放送回数は48回ありました。
4-2:設問1「コナン・ルパン映画放送日、雇用統計が有意に悪いといえるか?」
まず、金ローでコナンやルパンを放送する日、雇用統計が有意に悪いといえるかを調べます。
良い | 同等 | 悪い | |
コナン放送日 | 28.57% (2個) | 0% (0個) | 71.42% (5個) |
コナン非放送日 | 57.37% (144個) | 0.79% (2個) | 41.83% (105個) |
ルパン放送日 | 58.33% (7個) | 8.33% (1個) | 33.33% (4個) |
ルパン非放送日 | 56.50% (139個) | 0.46% (1個) | 43.08% (106個) |
平均と比べても、コナン放送日に発表される雇用統計のほうが悪いのでは、と言えます。
一方でデータの個数がとても少ないので、そもそもこのデータ自体に信頼性が低いですね。
これだけで「コナンの呪いはある!」と言ってしまうのも早計です。
ここからカイ二乗検定、フィッシャーの正確検定にかけました。
この中で差があるとされるのは、ルパンの放送日と非放送日が、カイ二乗検定で有意な差を認められました。
解釈としては「ルパン放送日は雇用統計が良い可能性が高い(byカイ二乗検定)」ってことです。フィッシャーの正確検定では否定されているので信憑性は低いけど、一定の傾向は見られるよう。
4-3:設問2「コナン・ルパン映画放送日の翌営業日、日経平均は良いか?」
次に、金ローでディズニーを放送する日の翌営業日、日経平均の動向はどうでしょうか。
ここでは、日経平均が前日比でいいか悪いかを判断しました。
上昇 | 横ばい | 下落 | |
コナン放送日 | 59.57% (28個) | 0% (0個) | 40.43% (19個) |
コナン非放送日 | 51.78% (3151個) | 0% (0個) | 48.18% (2931個) |
ルパン放送日 | 55.56% (25個) | 0% (0個) | 44.44% (20個) |
ルパン非放送日 | 51.82% (3154個) | 0% (0個) | 48.15% (2931個) |
これらをカイ二乗検定、フィッシャーの正確検定にかけましたが、意味のあるパターンは見つかりませんでした。
ということはルパン放送日は雇用統計が良い可能性は高いけど、日経平均が良くなる可能性はないってことのようです。
4-4:結論
結論としては、ルパンの呪い・コナンの呪い、どちらも認められないということです。
あえていうならルパン放送日の雇用統計は良い結果が出る可能性はある程度ある、でも翌営業日の日経平均には影響はなさそうと言えます。ただ、この結果もカイ二乗検定では出たけどフィッシャーの正確検定では出なかった。
うーん難しい。まさかこんな結果が出るとは。
奴はとんでもないものを盗んでいきました。私の時間と手間です( `皿´)キーッ!!
疑問5:NIKKEI225暴落率が高い日、過去3日以内に何らかの要因が起こる可能性は?
逆のアプローチもしてみましょう。「日経平均が暴落した日、過去3日のうちに何らかの要因が起こったりする?」と。
こちらは日経平均が暴落した日をベースにして、そこから数えて過去3日のうちに一定の現象が起こりやすいかどうかを見ます。
抽出されたデータはこちら。
日経が下落した日の下落率平均: -1.05%
下落率平均よリ大きく下落した日: 1094日
この下落率平均よリ大きく下落した日を日経平均が暴落した日と捉えます。
この日経平均暴落日から数えて過去3日のうちに以下の現象が起こる可能性はこちら。
- ジブリが放送された: 7.68%
- ディズニーが放送された: 2.65%
- コナンが放送された: 2.56%
- ルパンが放送された: 2.19%
- 雇用統計発表: 11.52%
と見るとやっぱり雇用統計発表日・ジブリ放送日は大変なんじゃないの、と思いがちですね。
てなわけでこういうデータも準備しました。
疑問5-1:NIKKEI225暴落率が高い日、前日にジブリが放送されたり雇用統計が発表される可能性は?
今度は、日経平均の全体と、日経平均暴落日にそれぞれ以下の現象が起こる割合を抽出しました。
日経平均全体 | 日経平均暴落日 | |
ジブリが放送された | 2.56% | 3.96% |
雇用統計が発表された | 3.96% | 3.56% |
ジブリ放送日と雇用統計が重なった | 0.60% (37個) | 0.73% (8個) |
ディズニー放送日と雇用統計が重なった | 0.23% (14個) | 0.37% (4個) |
コナン放送日と雇用統計が重なった | 0.11% (7個) | 0% (0個) |
ルパン放送日と雇用統計が重なった | 0.16% (10個) | 0.18% (2個) |
どの条件も満たさない | 92.17% (5652個) | 92.78% (1015個) |
ここからわかることは、特定の映画が放送されるからといって翌営業日に暴落が起こるわけではないということです。また、雇用統計発表とディズニー、コナン、ルパンの放送があったからといって下落するわけではないということです。
要は日経暴落日の要因と言えるものが金ローのアニメシリーズとで統計的に何かあるかっていう特徴は見つかりませんでした。
カイ二乗検定でも意味がある組み合わせはありませんでした。
おわりに
このあと、更にデータを精査したり、必要そうなデータを調査する段階が必要です。
必要なんですが、これを書いているのが1月9日の夜。この記事を10日までに出したかったので一旦ここでデータ調査を打ち切ります。
個人の調査の範囲では「ジブリの呪いっぽいものはないんじゃないかな、いくつか確証がありそうな結果は出たけど」という感じです。
改めて結果をまとめてみましょう。
- 金ローでジブリを放送する日、当日のダウやS&P500および翌営業日の日経平均に荒れやすい傾向がみられるかというとそうでもない
- 金ローでジブリを放送する日は、S&P500と日経平均(翌営業日)に株価が変動しやすい
- 金ローでジブリを放送する日、ダウとS&P500はマイナスになりやすい(かもしれない)
- 金ローでジブリを放送する日の雇用時計は、そうじゃない日に比べて悪い結果が出やすい傾向があるけれど、統計的に見たらまぐれの範囲
- 金ローでジブリを放送する日、トレンド転換と言われるゴールデンクロス・デッドクロスが発生する確率は有意に高いとは言えず、トレンド転換が発生するとは言い難い
おまけでほかの有名アニメ映画ブランドとも比較した結果がこちら。
- 比較対象に、ディズニー、コナン、ルパンを採用
- どれも「呪い」というほど有意差はなかった
- ディズニー放送日との相関は少しハッピーかも
- ディズニー放送日の雇用統計は良い結果が出やすい
- ディズニー放送日の翌営業日の日経平均は良い結果が若干出やすい
- ただ、この2つとも統計的な意味はない
- コナン放送日との相関は見当たらない
- コナン放送日の雇用統計は悪い結果がとても出やすいが、統計的な意味はない
- 注意:コナン放送日で雇用統計の発表日という条件が揃うこと自体、かなり希少なことで、極端なデータが出やすい傾向がある
- コナン放送日の翌営業日の日経平均に明確な傾向は見られない
- コナン放送日の雇用統計は悪い結果がとても出やすいが、統計的な意味はない
- ルパン放送日との相関は見当たらない
- ルパン放送日の雇用統計は若干ポジティブではある
- 「ルパン放送日は雇用統計が良い可能性が高い(byカイ二乗検定)」
- ルパン放送日の翌営業日の日経平均に明確な傾向は見られない
- ルパン放送日の雇用統計は若干ポジティブではある
それ以外にも出てきたデータはこちら。
- 雇用統計発表日の翌営業日の日経平均は下がりやすいとはいえない
- 雇用統計発表日の翌営業日の変動率の平均: -0.06%
- 発表がない日の翌営業日の変動率の平均: -0.05%
- 差が小さいため、意味があるとも言えないかも
- 雇用統計発表日のダウとS&P500は下がりやすい傾向がみられる
- ただし、雇用統計発表日ではない日と比較しても有意な差はない
個人の調査で出てきた範囲としては、これが限度です。
ただし注意点があるよ
この結果を見て「やっぱりジブリの呪いはあるんだ!」と判断する人もいるかもしれませんが、もう少し慎重になりましょう。
統計上必要なデータ量が少ないか、比較対照するデータとの差がありすぎると、統計上有意とは言えない(意味があるとはいえない)のです。
今回のケースで言えば、金ローでジブリが放送される日とジブリが放送されない日、雇用統計がある日とない日、で比較した場合、以下のような表ができます。
金ローでジブリを放送する日 | 金ローでジブリを放送しない日 | |
雇用統計発表日だ | A | B |
雇用統計発表日ではない | C | D |
当たり前のことではあるのですが、この中で一番多いのがDの「雇用統計発表日ではなく、また金ローでジブリが放送されない日」です。ちなみにDには「そもそも金曜日ではない日」「金ローが放送されない金曜日」も含みます。
このDと比べて、Aの「金ローでジブリを放送する日、なおかつ雇用統計がある日」の数の差が大きすぎる。
そして差が大きすぎると「有意に差がある」と結論づけるのは難しく、統計的に無意味だと判断されることが多いのです。
なので、ここではジブリの呪いがあるとは言えない。
全体のデータに対してジブリの放送日が少なすぎる。
という結論も出せます。
信憑性を高めるなら検定の種類を増やして統計的に意味があるか調べる方法、仮のデータを作ってシミュレーションを行う方法もあるっちゃありますが……。そこまではやらない。めんどくさいし手に負えない。
感想
- 記事を公表したい日が来てしまったので中途半端なところで終わって残念
- 傾向は見られるような気もするし、見られないような気もする
- コナン放送日の雇用統計が悪いほうが意外
- ルパン放送日に雇用統計の結果が良い、でも翌日の日経には相関がないのも意外
- 統計って「パリッと結果が出てなるほど分かったぞヽ(=´▽`=)ノスッキリ☆」ってなるものかと思ったけど、今回はそんなことなかった(´・ω・`)
- データ検証やデータまとめはつかれたので二度とやりたくない
- ただ他のアノマリー検証ならやってみたい
- もう少し効率的にできるといいな
- チャットGPTを使いこなすとIQが20くらい上がったような気がする!ヽ(=´▽`=)ノ
ただ、アノマリーはアノマリーのままだからロマンがあるというか。アノマリーを過去データに照らし合わせて傾向を見るのって無粋かもなぁ、というのも終わってみての感想です。
参考・提供元
最後に、参考や引用元にしたサイトや情報源をリストアップして終わりにします。使わせていただいてありがとうございました。
過去の金曜ロードショーの放映作品履歴:《金曜ロードショー》過去の放送一覧、放送予定の映画もすべて紹介!(ホビヲログ)https://www.hobiwo.com/entry/kinro
ジブリの作品一覧:スタジオジブリの作品(スタジオジブリ)https://www.ghibli.jp/works/
雇用統計の公表日時:https://jp.investing.com/economic-calendar/nonfarm-payrolls-227
最後に、こんな面白くもなんともない結果の記事をここまでお読みいただいて、ありがとうございましたm(_ _)m